射出成形とは、複雑な形の製品を速いスピードで大量に生産できる優れた製造方法のことです。
工程を大きく分けると、融かして・流して・固める、という工程になります。
射出成形を行う為には、射出成形機と金型が必要になりますが、役割としては ①成形素材を融かす → ②融けた成形素材を流す → ③流して固める為に金型を開け閉めする、となります。
よって、射出成形機は成形素材を融かし流しこむ射出ユニットと、金型を取り付け、開け閉めする型締めユニットから構成されています。更には、その2つのユニットを駆動させるための機構も備えています。
本記事では、射出成形機の歴史を含め装置の構造・機構を以下の順で紹介します。
- 射出ユニット
- 型締め機構
- 射出と型締めのレイアウト
- 駆動方式
射出ユニット
射出ユニットとは、プラスチックの材料を投入するホッパー、材料を加熱するシリンダー、噴射ノズルなどが含まれます。
材料を熱で溶かして、金型に注入するための装置のことになります。
ここでは、5つご紹介します。
【 ロータリー式2色射出成形 】
稼働する側の型締め装置がロータリー式に回転する構造です。金型を回転させることで、1次型で成形した部品がそのまま2次型へ移動、新たに設けられたキャビティ面との隙間に2次型樹脂を充填して、成形する成形方法です。ハイサイクルな成形によって、製品を合理的に成形します。
【 L字2色射出成形 】
押出機がL字に配置されているのが特徴です。パーティング射出方式で2次型樹脂を金型のコア面(凸側)に充填することが可能です。キャビ面(凹側)/コア面の両方の形状が変えられるため、より複雑なアセンブリ一体成形や型内インサート成形を実現します。また、ロータリー式のように金型2面を必要としないので金型のコストを低減させることが出来ます。
【 プランジャー式射出成形機 】
加熱シリンダーの中にある成形材料を、ピストンの形をしたプランジャーで圧力をかけて射出を行います。
1960年代の初めの方までは一般的な工法でしたが、今はあまり使われず、特殊な用途にしか使われていません。
【 プリプラ式射出成形機 】
シリンダーを2本、組み合わせた構造となっています。
プリプラ用加熱シリンダーの構造の違いで、2つのタイプに分類されます。
- プランジャープリプラ式
成形材料の予備の可塑化(かそか)に、プランジャー式とほぼ同じ構造をしたものを使用しています。 - スクリュープリプラ式
成形材用の予備の乾燥に、スクリュー式を利用したものです。
【 スクリュー式射出成形機 】
1本のスクリューに、成形材料の可塑化・混練(よく混ぜ、練り合わせる)・計量・射出の4つの機能を持たせたもののことです。
プリプラ式に対して、スクリュー・イン・ライン式とも呼ばれ、現代におけるもっとも代表的な構造です。
型締め機構
型締め機構とは、金型を取り付けや金型の開け閉めを行ったり、材料からの圧力に抵抗して金型を閉じたり、材料の突き出しを行う装置のことになります。
トグル方式と直圧方式の二つがあります。
【 トグル方式型締め 】
トグル方式では、アームが開いた状態の時に射出成形の圧力を受けても、強い油圧力が無くても強い型締め力を発揮できる利点があります。ですが、位置を調整するには、型締め全体を移動させなければならないので注意が必要です。
【 直圧方式型締め 】
直圧方式の型締め装置では、ワンクッションを挟まないので射出成形の圧力を直接受けますが、位置を調整するには油圧シリンダを移動すれば簡単にできます。
射出と型締めのレイアウト
一般的に射出成形機では、射出ユニット・型締めユニット2つを水平に組み合わせた横型と呼ばれる構造が多く使われています。また、型締め部分をが垂直に組まれている竪型射出成形機と呼ぶ構造も仕様によっては使われています。
横型・竪型どちらとも、熱硬化性成形物を射出成形した初めの頃(1930年代)から使用されていますが、一般的には、横型が主流となってきています。
対して竪型射出成形機は、ロボットなどを用いた自動化が簡単で、ロータリーテーブル・シャトルテーブルなどを組み合わせることで、金属部品のインサート成形などに使われています。
駆動方式
1920年代、射出成形機が実際に用い始められた頃、ドイツのバッテンフェルドが一番最初に電動駆動方式を始めましたが、普及することは無く、その後は油圧方式に変わっています。
1950年代には、油圧駆動のアクチュエータ(動力源と機構部品を組み合わせて、機械的な動作を行う装置)がスクリュー式に導入されるようになり、生産性が飛躍的に改善されました。
1970年代になると、マイクロプロセッサによる制御技術が開発されました。
各種様々な設定がディジタル化されて、制御性が大幅に改善しました。さらには、圧力の閉ループを制御など駆使して、より安定した高精度成形が可能になりました。
時代が経つにつれて、油圧駆動は型締め力が5~10t規模の射出成形機から始まり、型締め力が6000t規模の射出成形機に至るまで、様々な射出成形機が製造されるようになりました。
※1977年:HPMが3000t射出成形機。1992年:日本製鋼所が6000t射出成形機を製造しました。全長30m。
一方で、作動油の粘度が温度によって変わってしまうことや、制御弁の動作の特性の安定性、さらには省エネルギーへの対応不足が課題となり、電動駆動方式が日本で改めて注目されるようになりました。その影響で、1980年代になると、駆動方式として電動駆動システムが登場しました。
1985年のアメリカのNPEには日本のファナックとアメリカのミラクロンが、電動式射出成形機を展示して注目されました。この頃には、他社も競って、この方式の射出成形機を使用し始めました。
現在の電動駆動方式では、サイクル短縮をするために、型の開閉・製品の突出し・射出・可塑化を独立させ、4つのサーボモータで駆動する機構が一般的です。高精度化、また成形能力の高度化に対応するために、閉ループの圧力制御を導入しています。
電動駆動方式の射出成形機の持つ省エネ効果および制御性能向上などが注目を集めて、短い期間で電動駆動方式が日本での主流を占めるようになりました。
電動駆動方式は主に中小型規模で使われていますが、場合によっては型締め力3000t超の装置にも適用されるようになりました。
さらに、現在はその油圧駆動方式・電動駆動方式の利点を組み合わせた駆動方式も出現するようになっています。
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